Deux avis valent mieux qu'un.

 連れ去られたレイラは息をつく暇もなく、どこかへ着地していた。体感時間は一瞬のようだった。周りには本がぎっしり詰め込まれた棚がたくさん並んでいた。どこか懐かしい匂いが鼻を通り抜けていく。

「よっと、到着」
「どこ掴んでいたのですか!?」
「腹あたりだっただろ。大体、姫サマの胸とかあってないようなものだし」
「そういう問題ではなくてですね……あれ、ここって――」
「アンタには懐かしいんじゃねぇの? ヴィオラ図書館だよ。オレは頼まれてアンタをここまで連れてきた。危害は加えるつもりはねぇから安心しな

 懐かしいと思ったのは間違いではなかった。ここはやはり故郷のヴィオレットだった。
 しかし、今は郷愁に浸る余裕もない。

「……そう言われて信用出来ると思いますか?」
「信用するかしないかはオレには関係ねぇ。詳しい話はアイツに聞け。久々に動いて疲れたからちょい寝るわぁ……」

 魔法使いが示す方へ視線を向けると、そこには気だるそうに椅子にもたれかかっている女性がいた。知り合いという程でもないが、全く知らないわけではなかった。

「まず、無礼を働いたことを謝るわ。フォルテも言っていたけれど、危害を加えるつもりはない。ちなみにフォルテというのはそこの魔法使いね」

 フォルテは名前を出されても特に反応せず、宣告通りソファで横になっていた。ぐっすり眠っている。

「私を連れてきたのはメロディアさんだったのですね」
「確かめたいことがあったの。私は忙しいからフォルテを使った。どうせ貴方達の最終目的地もここになるだろうし、ちょうど良かったでしょ」

 四か所の封印を解いた今、最後はヴィオレットの封印を残すのみだった。それも踏まえてメロディアはこのタイミングでレイラを攫ったのだ。わざわざ誰か分かるようにしたのもその為である。

「確かめたいこと、ですか。私はそこまで知らないですよ。どちらかと言えばルーンの方が詳しいと思います」
「姫様の言うことはもっとも。でも、確かめたいこと以外に、貴方に知ってもらいことがあったの。だから招待したのよ」
「……私に?」

 怪訝そうな表情をするレイラ。知ってもらいたいこと――色々なことが頭をよぎる。
 メロディアが深くため息を吐くと、突如図書館の中に風が吹き抜けていく。思わず目を瞑り腕で顔を覆った。ヴィオラ図書館は地下にあるのに、どうして風が起こったのか――その答えはすぐに分かった。
 再びレイラが目を開くと、メロディアとレイラの間にいつの間にか銀髪の少女がいた。少女は行儀悪く机の上に乗り、ニヤニヤとレイラを見つめる。

「そう……レイラ姫は知るべき。そうすればもっと、面白くなるでしょ――?」

 星屑の嵐が図書館を荒らしていく――状況は目まぐるしく加速しているようだった。