The truth hurts.Il n'y a que la vérité qui blesse.

 森の外でレイラ達と別れたフルールは盛大なため息を吐いたところを、メロディアに見つかってかなりいじられた。もう帰っていたかと思ったが、メロディアはずっと待っていてくれたようだった。礼をいいながら二人でヴィオレットに帰った。メロディアは報告を全てフルールに押し付け、図書館へ引きこもってしまった。
 すべて押し付けられたフルールは一人、場内にある庭園のベンチでぼうっと月を見上げていた。

「散々な目に合った。レインになんて言えばいいのやら……メロディアも一緒に考えてくれてもいいのに」
「おい」
「ッ……!?」

 声を聞いただけで、誰か分かってしまう。フルールの中で今現在顔を合わせたくない人物一位であった。

「どう行動しようが勝手だが、馬鹿な真似だけはするな」

 どうやら全て分かっているような口ぶりだった。隠し通せるとは思っていなかったが、監視でもしていたのだろうか。フルールはレインの言い草に少し苛立ちを覚える。どこまで、自分のことを信用していないのか――悔しさがこみ上げてくる。

「レイラと会ったけれど、貴方のことは聞いてこなかった。どっちかっていうと、自分のことで悩んでいた感じだった。あの子も前に進んでいる。どういう形であれ……」
「そうか」

 レインの反応は相変わらず淡泊なものだった。未だに何を考えているのか分からない。レインの頑なな態度は変わらないが、フルールは必死に訴える。

「貴方はちゃんと正しい道を進めているの?」
「間違っていたとしても、進むしかない」
「レイン、私は信じてる。貴方の、進む道を――だから……」

 そのままフルールは寝てしまったようだった。レインは糸の切れたフルールを抱きかかえる。疲労がかなりたまっていたのだろう。フルールが何をしていたのかは、メロディアが上げた報告で知っていた。フルールは何も知らなかったようだが、メロディアは面倒でも自分に与えられた仕事はこなすタイプだ。疲れが溜まっているであろう、フルールの代わりにレ―ヴ森林での出来事をまとめてくれたのだった。

「分かっている。それでも、俺は一人で背負わなくてはいけない。この国の……レイラの為にも」

 誰にも言えない、言えるわけがなかった。
 この国が――世界が終っている――など全てを裏切ってでも、この真実は隠し通さなければいけなかった。自分に出来ることは限られていた。あの魔女をどうにかしなければ――レインは内心焦っていた。
 
「後戻りなんて出来ないわよ。アタシもアナタも魔女の胃袋の中。あのお姫様がぶっ壊してくれるのなら、それも面白いけどねぇ」
「何の用だ」

 レインが顔を上げると、いつの間にか魔法使いの少女――クロエが空に浮かんでレインを見下ろしていた。いつも一緒にいるアルノが今日はいなかった。恐らくどこかに待機しているのだろう。クロエ達はレインが一人でいるときによく現れる。

「浸っているトコ悪いけど、魔女様からの伝言よ。『余計な気を起こしたら、どうなるか分かっていますよね』だってさぁ。レインサマ何かしたのぉ~?」
 
 クロエは手を口に当てながらレインを嘲笑う。レインは闇を振り払うように、目を閉じる。フルールはレインの腕の中で寝息を立てていた。話を聞いている様子は無さそうだった。

「お前には関係ない。失せろ」
「関係なくはないでしょ。あんたがやらかしたら、こっちにもとばっちり来るんだから!」
「自ら協力しておいて、臆病風に吹かれたか」
「……それはあんたも同じでしょ? 妹を売ったヘタレ王子が」

 悪態を吐いて、クロエはそのまま消えていった。五月蠅い虫が消えて再び静寂が訪れる。

「背負うのは俺だけでいい。もう二度と……」

 思わず手に力がこもる。幸いにもフルールは目を覚まさなかった。夜の帳に包まれた世界、人の声も聞こえてこない。レインは神へ反抗するかのごとく、空を鋭く睨みつけたのであった。