Faute de grives, on mange des merles.

 世界では絡まった糸の如く、思惑が交差していた――ヴィオレットのとある場所にて。

「封印が解かれたみたいねぇ。どうなっちゃうんだろ。こわぁい……ふふっ」

 クリーム色の髪をした少女は怯えるそぶりを見せながらも、どこか面白そうな玩具を見つけたように笑う。

「アイツから何か取り立てられたらいいんだけどねぇ。そうもいかないのよねぇ。世の中って上手くいかないわよねぇ。やんなっちゃう!」
「……そんなこと言ったら、消されると思うよ」

 少女の傍らにいた黒髪の少年がぼそっと呟く。少女はその言葉にぴくりと反応した。

「余計なことを言わなくとも、分かってるわよぉ?」

 少女は愛らしく口元を緩めつつも、少年のつま先を思い切り踏んづけた。可愛らしい見た目とは裏腹に、苛虐的な態度を見せる少女に対して、少年は足を踏まれても表情一つ変えなかった。

「ちょっとぉ、そこの人ぉ。関係ありませーんみたいな顔してるけどぉ。それでいいわけぇ?」

 少女は嘲るように問いかける。少女の視線の先には、紫の髪をした男が腕を組みながら立っていた。男は少女の嘲笑には目もくれず、目を瞑っている。その存在すら認めたくないようにも見えるが、ここに居座られても面倒だと思ったのか、ようやく口を開いた。

「やるべきことはやる。それだけだ」
「それしかないもんね~アタシたちいい仲間でしょ? 仲良くしましょうよ、ねぇ」
「低俗な魔法使いが。神聖な城からさっさと消えろ」
「……はいはい。ヴィオレットの城なんて、陳腐で他に比べて見所ないし、言われなくても長居しないってのぉ」

 少女は悪態を吐きつつも、少年の方へ目配せをし、少年は少女の合図を受けて、魔法陣を一瞬で展開した。

「お互い、ゆるーく頑張りましょ~」

 少女と少年は魔法陣の放つ光に飲まれ消えていった。部屋に残された騎士は、厄介者が去って安堵したのか男は再び溜息を吐いた。

「どうすればよかったんだ。俺は、俺は……」

 それは決して届かない思いだった。どう足掻いても、逃れられない現実が彼を縛る。そう遠くない未来、世界は大きく変わる。未だに割り切れない過去、最後まで言えなかった言葉が男に重くのしかかる。
 国を守らなければならない王子は過去から前に進めず、今も後悔し続けていた――