ここに来てからどれほどの時間が経過したのでしょうか。私はというと、深く考えるのをやめた時から、心が擦り減っていくのを感じていました。死に近づいているとでも言えばよいのでしょうか。じっと動かず虚ろなまま揺蕩っていました。相変わらず呻き声だけは聞こえてきます。慣れてしまえばどうってことありません。
「慣れたら終わりな気もするけれど……」
私という存在が、この空間に馴染み始めたころ、この空間である異変が起きました。
始まりは、ただの白い線でした。最初のうちは一直線に入っていただけでした。そばに寄ってみようと試みましたが、思った以上に距離があるみたいで近づけません。近づけば近づくほど、遠ざかっていくような感覚でした。そのうち私は諦めて眠ってしまいました。どれくらい眠っていたのか覚えていません。
それからしばらくして、白い線は亀裂のようになっていました。亀裂と呼んでいいのかも現時点では分かりません。色々と詳しそうなヴェーダを呼んでみましたが、彼女からの返事はありませんでした。もう死んでしまったのでしょうか。ヴェーダは当てにならないうえ、今はアレを調べるという選択肢しかなさそうなので、とりあえず今度はめげずに頑張って近づいてみることにしました。黒い海をどんどん泳いでいきます。前に進んでいるはずなのですが、いくら進めど白い線のあるところには近づけません。魔法の類なのでしょうか。自分では判断しようがないので、考えるだけにとどめました。これを魔法だと仮定すると外部から誰かが、何かを仕掛けていることになります。
誰かが封印を解こうとしているとか――?
「まさか、そんなこと」
否定しながらも、私の胸の鼓動は早まっていきます。まるで蜘蛛の糸を掴むような賭け。
「少しくらいならいいですよね。夢見ても……」
世界に入った亀裂――これがきっと、世界全体に広がれば外へ出られるかもしれない。
私はひび割れた世界の中で、静かに祈りを捧げました。