君は夢の終わりを知るだろう

「言ってること無茶苦茶じゃんか。嫌いとか言うくせに、何なんだよ。何でだよ……ずっと、夢を見てくれたらよかったのに」

 柘榴は紫苑の手を掴んでいたが、そっと下ろした。これまでに感じたことのない、感情が湧いていた。空魔というより、自分を構成する魂の欠片が反応しているようだ。柘榴の中でクロと柴陽の記憶が交互に蘇る。過去に抱いた願いは、未だ柘榴の中に残っていた。死んでしまった日から、ずっと忘れることなく、抱えてきた。

「本当に、本気で好きだったんだよ。僕だけ、見て欲しかっ、たんだ……世界とか、どうでもよくって、さ。二人だけで、いられたら、よかった……」

 柘榴の願いは、紫苑とずっと一緒にいることだった。最後まで紫苑に言えなかった本音――真実だった。紫苑は気付いていないようだった。これで良かったのだ。気付いていたら、歯止めが利かなくなっていただろう。空魔である柘榴の本性は、どうしようもないものだった。紫苑の思いとは相容れることのない感情。空魔にとって感情を否定されることは致命的だった。

「上手く、いかないね、本当。苦しいよ。ずっと、苦しい。吐き出したいよ……」

 この世界で、この世界が終わるその日まで、立ち止まっていたかった。永遠を望んでいた。
 けれども、願ったのは紫苑の幸せだった。紫苑が夢から覚めたいというのなら、繋いだ手を離すしかなかった。柘榴の側に横たわる紫苑はどこまでも、安らかな表情をしていた。

「やっぱり、笑ってる方が、いいな……」

 誰の記憶なのかも分からない。心から笑っている紫苑を見たのは、いつ以来だろうか。紫苑が心を閉ざして、暗闇の向こう側に行ってしまってから、かなり時間が経っただろう。

「そこらへんに……咲いているような、雑草じゃないんだよ。君は――」

 時間がかかったとしても、花のような笑顔を向けてくれた、かつての紫苑を取り戻せてよかったと、心から思う。正直、二度と叶わないと思っていたのだ。

「一緒に、朝日を見られて、よかったよ」

 残された時間は僅かだった。体は塵と化していた。
 たとえ、自分が消えてしまったとしても、――夢のような時間は確かに存在していたのだ。誰に否定されようとも、心の中にずっと焼き付いている。

「さよなら、僕の夢……」

 柘榴は太陽に手を伸ばしながら、最期まで笑っていた。
 頬に一滴の思いを残して――