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 ミオネ曰く、彼女は様々なモノの心に寄り添う存在。いつから生まれたのかは分からないけど、気付いた時からそうだったらしい。自我と呼べるのかは分からないが、意識がはっきりしたのは、ほんの最近――それでも数千年前だとか。規模が違い過ぎて、想像出来ない。突っ込んだら負けだと思われる。
 そして、過去・現在・未来に至るまで、生きとし生けるモノの心に住まう存在であるミュオソティスは全てを見通す力がある。心は誰もが持っているものだけど、時には無くしてしまうもの。彼女の存在はとても、曖昧で定義づけられるものではなかった。
 だから、誰の目にも止まらないし、誰にも見えないし、触れない。ずっと独りで生き続けていたという。心を持つモノの未来を束ね、道筋を描く――それが彼女に与えられた役目。心は輝きに満ちて、ときには絶望も描く。紡ぎ続けた物語は、未来永劫続いていく――

「このように私は一言では言い表せないくらい、奥の深い存在でして」
「……それ、自分で言う?」
「私もよく分かりませんから。それでも、誰の目にも止まらないのなら、それでよかったのです。永遠に独りならば、私は変わらずに済んだのです」

 ミオネは目を伏せる。ずっと独りなら――ミオネの言葉はずっしりと重たかった。

「しかし、時の流れは許してはくれなかった。時代と共に少しずつ、私の存在を認知出来る者たちが、現れるようになったのです。巫女、魔法使いなど……とにかく職種は様々です。共通するのは、この世の常識とはかけ離れたものを繋ぐ存在であること……」

 神の使い、悪魔の召喚その他諸々そういったことに長けている人間が、ミオネの存在を知覚するようになってきたらしい。魔法使いは実際に見たことないし、よく分からないけど。巫女が声を聞くのは、あり得る話なのかもしれない。ミオネは人の心に寄り添い、希望を作り出す存在。神なのかと言われたら、違うと思う。見た感じ神に見えないし。

「私は数ある種族の中でも、人間という生き物に強く興味を惹かれました。彼らの心は様々な色を映し出す。私はその景色が何よりも好きでした」

 ミオネは人間に興味を持つようになっていったという。心からそう思っていたのだろう。でなきゃ、私なんかに目をかけることもしなかったはず。すごい存在なんだけど、その辺ではしゃいでいる子どもと、そう変わらない気がしてきた。

「いつしかその興味は、私の存在にある変化をもたらしていきました」

 変化――一度知ってしまったら、避けては通れない道。ミオネはいつの間にか、変わってしまったという。

「彼らの思いに触れて、自身の気持ちに気付いたのです。私は寂しいのだと。あの輪の中に入りたいと、不相応にも思ってしまいました」

 そして、ミオネは悲痛な表情でミュオソティスへ告げる。夢の終わりを示すために――

「ミュオソティス――貴方はそんな私の成れの果てなのです」