過ちを重ね続ける、二つの縁。
重なる事の無い、二つの輪。
互いに惹かれ、曳かれ、轢かれていく運命。
最初から全て決まっていた、というのなら――自分に出来ることが無かったのなら、諦められた。中途半端な希望を持たせるくらいなら、最初から最底辺まで落としてくれた方がよかった。今となっては、あの花畑に行かなければよかったと後悔するくらいだ。
全ての始まりにして、終わりの場所。
繋がりがあったから何だと言うのか。細く今にも、ちぎれそうな糸で繋がれた関係でしかないのに。自分に一体何を見出したのだろう。そんなにも似ているか。どこの誰なのかも、自分はしらないのに。重ねられて迷惑だ。
奴に奪われた右目はいつだって、行き場の無い感情に苛まれていた。家族にも悟られないように、息をひそめて生きてきた。
だが、聡い弟は気付いていたようだった。問い詰められたときもあったけれど、何も変わっていないと押し通した。自分は自分だと、自己暗示をかけるように、言い聞かせてきた。
そうでもしないと、世界が遠のいてしまうから。
そんなことをしていたら、自分が何者か分からなくなっていた。自分が本当に生きているのかすらも、曖昧になってきた。それでも感情を押し殺し、独り耐えてきた。食べ物の味が分からなくなっても、空腹の感覚を忘れてしまっても、人ではない何かになってしまったと気づいてしまっても、独りで歩き続けた。この身に受けた呪いをどうにかしようと、奴を――空魔を殺そうと果ての無い道を進んだ。生涯誰も愛さず、愛されなくてもいい。呪いも空魔も自分も、この世界から消し去ることが出来れば――そう思っていたのに、愚かにも夢を見てしまった。
彼女に会ったのは、普通に生きることを諦めた頃だった。桜の花が舞う、出会いの季節だったが、自分はそんな感傷に浸る暇もかった。温かい日差しが差し込む構内を歩いていたら、背中に何かがぶつかった。振り返ってみれば、尻もちをついた人間がそこにいた。
それが時津玲菜との出会いだった――
玲菜は明るく誰からも好かれていた。少し抜けているところがあるけれど、芯はどこまでも真っ直ぐだった。客観的に見て、好意を抱く人間がいてもおかしくは無いと思われる。
この時、自分には縁の無い話だと思っていた。彼女が話しかけてくるまでは。
出会ったことは後悔していない。だが、彼女はどう思っていたのだろうか。本当のところは不安だったのだ。こんな自分で良かったのか。最期に玲菜は笑っていた。自分も笑っていた。笑うしかなかった。どこまでも、逃れられない運命だったと。
もしも願いが叶うのなら、玲菜に伝えたかった。
とてもありきたりで、どこにでもあるようなありふれた言葉だけれど――愛している、と。