茉莉花たちが勿忘草の花畑に来る前――花畑に佇んでいるのは、憂いを帯びた表情の紫苑。未だに答えが出ないまま、この場所に足を運んでいた。紫苑の傍らには、抜け殻のようなミュオソティス。人型空魔がほとんど消えていき、ミュオソティスの力は弱まり、ワスレナのユリカゴは壊れ、引きこもっていられなくなったのだ。紫苑は風になびく勿忘草を見ながら、教えられた真実を前にショックを受けていた。
「未だに信じられない……」
「信じようが信じまいが、本当の話だから」
「疑っているわけじゃないけど、実感が湧かないの」
紫苑が思っていた通り、柘榴がクロだったということ。柘榴が紫苑の痛みや、記憶を引き受けていてくれていたこと。やたら構ってくることに納得はいった。ミオネが責めるなといったのも無理はない。むしろ、感謝するべきところだろう。
しかし、素直に感謝する気にはなれなかった。柘榴がクロには思えなかったからだ。どちらかといえば――
「紫苑の言いたいことは分かるよ。それも含めて説明しようじゃないか――僕と“彼”の話をね」
柘榴の表情からは思い返すというよりも、忌々しい記憶を掘り起こすような苦しさが見えた。