いつから止まってしまったのだろうか。時は流れているのに、あの時からずっと止まったままだった。動かそうと思えば、動かせたかもしれない。
けれども、そうする気が起きなかった。ずっと向き合えないまま。
きっと、目の前に差し出された手があっても、伸ばせない。
幼い時分より知っていたから――希望は手を伸ばしたら、ふっと消えてしまうような儚いものだって。期待はすればするほど、失望した時にショックが大きくなるものだって。
『私は、幸せだよ。りーさんの隣にいられて、良かった。ありがと、』
母さん。本当に、幸せだったのか。これで良かったのか。あんな目に合っても――父さんに絞め殺されてもそう言うんだ。花のような笑顔で、最期まで母さんは言うんだ。
『……あの人を、お願い』
そう言われても、自分には何も出来ないよ、母さん。母さんが救えないんじゃ、誰も救えないよ。あいつはずっと、独りでいると思ってるんだ。誰も見ちゃいないんだ。
『葵、すまない。許してくれとは言わない。僕が、どうにかするから。どうか――手伝ってくれないか』
最初から期待してないよ。そりゃ「勿忘草を見た」って言ったときの父さんの顔。あの絶望しきった顔を見たら、何も言えないって。
責めたりしないさ。ただ、虚しいんだ。いっそのこと、捨ててくれたらよかったのに。見放してくれたらよかったのに。
なんで、なんで中途半端に、繋がりを求めようとするんだ。
結局、忌まわしい呪いに憑りつかれたまま。何も変わらない。変えられない。
誰でもいいから、終わらせてくれ。全部、壊してくれ。