「閉じた世界って……どういうこと?」
気付いたら、鮮やかな空が見えた。鮮烈な光はなく、不思議な空間が広がっていた。どうやら、いつの間にかユリカゴに戻ってきたらしい。変な安心感に包まれる。
「や、無事でよかったよ」
柘榴はそういって手を差し伸べてくれたが、私はその手を取ることなく立ち上がる。どういう態度を取ればいいのか全く分からない。ミオネのいうことが正しければ、私は彼に対して、とんでもなく酷いことをしてしまっているから。聞こうと決心しつつも、思うように声に出なかった。聞きたいことも聞けずに、問題を先延ばしするように塔内を見渡した。そこには力なく項垂れているミュオソティスの姿があった。
しかし、一緒にいたはずのアヤメさんは見当たらなかった。
「アヤメさんがいない」
「彼女なら空魔研究所に行ったよ」
「それって……所長たちを始末しに行ったってこと?」
「元々敵対しているわけだから、当たり前だろ」
どうやら、空魔らしく敵を倒しに行ったようだった。
だが話を聞いても、あまり心配する気持ちが湧いてこない。自分でも驚いている。何もかも、どうでもよくなってしまったみたいだった。いや、そういうワケではない。ちゃんと、痛みも苦しみも戻ってきている。正常なはずなのに。そう思ったところで、私は気づいた。記憶を取り戻したからこそ、どうでもよくなっているんだろう。
だって、私がやるべきことは空魔を倒すことじゃない――もっと大事なことがあるから。まだまだ、頭がくらくらする。考えがまとまっていないせいか、気持ちがふらふらしているようだった。頭を押さえていると、柘榴が心配そうに声を掛けてくる。
「おーい。大丈夫?」
「大丈夫……だと思う」
「紫苑がそう言うならいいんだけどさ。それで、モヤモヤは全部払拭された感じ?」
分かってて聞いているんだろうな。心なしか、見下しているように思えるのは、私の穿った見方のせいか。それとも――
「……よく分からないのに出会って、詳しい話は貴方に聞け、って言われて追い出されたけど」
結局、ミオネとは何だったのか。今は気にすることではないだろう。柘榴に聞いたところで、どうせ意味無いだろうし。だったら、もう回りくどいことなどせずに、ストレートに聞くしかない。柘榴はというと、私の心を見透かすように問いかけてくる。
「何が聞きたいのさ」
「貴方がクロなの?」
「……半分正解、半分不正解」
一瞬だけ、間が空いたような気がしたが、すぐに答えてくれた。
だが、引っかかる言い方だった。煮え切らない答えに私は頭を抱える。相変わらず、何を考えているか分からない。
「答えるつもりはあるの?」
「まーね。話せば長くなるけど」
「それでもいいから、教えて。貴方のことも、これまでの行動の意味も含めて」
答えはとっくに知っていた。最初から、終わっていたことも。私は忘れていただけ。いや、無かったことにしたんだ。これは確認作業だ。真実を知ったからこそ、確かめないと。
「それが紫苑の望みなら――」
柘榴はそう言って、ワスレナのユリカゴに入った亀裂を見ながら、どこか悲しそうに笑うのだった。