鏡合わせの自己

 愛ってなんだろう。どうして人は愛があるとか、無いとか分かるんだろう。形もなくて見えないものなのに、どうして信じられるんだろう。

 私は最期まで自分の中にあるものを見たくなかった。現実を知りたくなかったのだ。

 決して自分の中にある感情の名前を知らなかったわけではなく、知っていたからこそ目を逸らしていた。
 気づいてしまったら、全て終わってしまうと思ったの。泡のように脆く、夢のような綺麗事。
 
 全てを閉ざした私が選んだ道は、無数の刺が刺さる茨道。心を締め付けるような痛みからは、永遠に解放されない。
 それが私に一番ふさわしいと思った。
 
 かつて、私は大切な心を否定してしまった。私を思ってくれる人を心無い言葉で傷つけてしまった。感情を汚らわしいと思ってしまった。
 
 その結果、私は自身が否定したものに、溶けていった。こんな私を君はどう思いますか。
 
 この感情は誰にも知られたくない。特に君にだけは、絶対に。

 あぁ、そんなのもう関係ないか。

 夢のような世界だけれど、夢なら何を言っても許されるよね。どうせ、私は消えてしまうから。
 
 私は君のことが好きでした。どこか陰のある君の姿に心を惹かれました。君は心から愛されたいのに、他者を拒んでいる。深く入り込まれるのを避けているように思えました。
 
 きっと、愛されるのは好きなんでしょう。けれども、君が心から愛したいと思う人はいなかった――
 
 それはとても虚しいことです。私の思いが一切届かない場所にいるのですから。

 だからこそ、私は自分の思いを告げませんでした。君は一人を愛することなど、出来ないだろうと思って。私が言えたことじゃないけど、きっと君は愛を知らないから、真実を知らないから――なんて、そんなのは建前で。
 
 本当は君に拒絶されるのが怖かったのです。とんだ臆病者です。それに私は人を愛する資格が無い。愛を否定しておいて、人を愛することなど許されるはずがありません。
 
 これが私の気持ち。この思い、君が知ることは無いでしょう。その時に私はもう私ではなくなっているだろうから。自分が何なのかも分からなくなっているから。

 誰にも言えなかった、私の秘密で隠しておきたかった真実。私が望んで受ける罰。

 私もあの子みたいに素直だったらよかったのに。
 もしも、私が思いを伝えていたら――今になって……私は。

 神様いるのなら、この声が届いているのならお願いします。私は、君のことを――